2010年01月27日

『メイドロボットはどこから生物となるか』…夏緑 


『メイドロボットはどこから生物となるか』…著者;夏緑 制作;トレンド・プロ オーム社



先日、『生物と無生物のあいだ』を取り上げたとき、もっとそのタイトルにふさわしい本がある、というお話をしました。
これがその本です。
実は先に挙げた『生物と無生物のあいだ』と『生命とは何か』は、この本を紹介したいがために導入として出したようなものです。
表紙とタイトルから、敬遠される方もいらっしゃると思いますが、良書です。


出版元はオーム社。
書店で、科学系の本棚を覗く方は知っているかもしれません。
『マンガでわかる○○学』シリーズの会社です。
『マンガでわかる〜』シリーズと同様、この本も物語形式になっています。ただし、小説です。
登場人物は主人公・ミコトと、生物部の部長・二重橋、そして、彼らのクラスに転校(?)してきたお手伝いロボット・ピノンの3人。
ピノンは人間とどう違うのか?を中心にして、議論は深まります。
遺伝子、生命の誕生、人は不死になれるか?、進化論、発生学、性決定様式、ウイルスは生命か?、そして『死』……。
多様なテーマが、簡潔に分かりやすくまとめられています。
これ一冊を繰り返し読めば、分子生物学の基本的なところは、大抵分かるようになります。

ところで著者、夏緑先生は、アンドロイドサイエンスにも造詣が深いようです。
注意していると、物語の背後にある考え方から、それが読み取れる場面が多々あります。
管理人は、前にちょっと必要があってそれ関係の本(※1を読んでいたので、そこで述べられていたことと本文中の記述との一致に、結構驚きました。
巻末の著者紹介の欄を見てみると、この方、漫画「ゴルゴ13」の原作も手がけていらっしゃるとのこと。
それだけに、物語の構成も見事。
最後には不意打ちのように泣ける展開が待っています。
この手の本にありがちな、こじつけのような終わらせ方ではありません。
分子生物学とアンドロイドサイエンスの知識に基づいたハッピーエンドは、説得力に溢れています。

表紙につられて、『萌え』を求める人にもお薦め。
天然のメイド、ツンデレの部長と、キャラクターたちはちゃんと基本(?)を押さえているので安心(??)です。

巻末に詳細な参考文献リストが載っています。
この本がきっかけで、分子生物学に興味をもたれた方は、そちらもごらんになるといいでしょう。


――補足
作中で『活性酸素』というものが出てきますが、これがところどころ『活性酵素』となっているところがあります。
この点に関してオーム社に問い合わせたところ、やはり誤植だということでした。
メールを送ったのですが、即日で詳細な回答をいただけました。
オーム社のTさん、そして著者の夏緑先生、お忙しいところ、ありがとうございました。


(※1アンドロイドサイエンス ~人間を知るためのロボット研究~


ラベル:オーム社
posted by kbk-mzp-ck9000CP at 23:11| 東京 ☀| Comment(0) | 書評・ノンフィクション・数理系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月25日

『生命とは何か』…E・シュレーディンガー

『生命とは何か』…著者;シュレーディンガー 岩波文庫



『シュレーディンガーの猫』という言葉を、聞いたことがありますか?
量子力学の世界で語られる、有名なパラドックスらしいです。
内容を説明したいのですが、それには高度な専門知識が必要なので、ここでは割愛させていただきます。
とにかく、そういうものがあるということです。
この本は、そのたとえ話を作った、シュレーディンガーという有名な物理学者の著書です。

先に紹介した『生物と無生物のあいだ』とは違い、この本の内容はタイトル通り。
『生命とは何か』に対する考察を、生物学ではなく、量子力学の立場から進めていきます。
1943年に行われた公開公演を基にしており、数式による説明が極力省かれていますので、理数系の知識がない人でも、ちゃんと内容を理解することが出来ます。

原子はなぜこんなにも小さいのか?

最初に提示されるのは、そんな一見無関係とも取れる質問。
しかし、ちょっと視点が逆になるだけで、生命の秘密と量子力学を結びつける鎖が、鮮やかに浮かび上がってくるのです。

なぜ私達の肉体は、原子に対してこんなにも巨大なのか?

シュレーディンガーは、物理法則が統計に基づく、近似的なものにすぎないことを語り、そこからこの秘密を、順々に秩序立てて解き明かしていきます。

薄い本ですが、各章の主張をしっかりと理解しなければ先に進めないので、読み終わるまでには結構時間がかかります。

ただ、前に紹介した本と違って、文章に無駄はありません。
各節に具体的な表題と通し番号をつけているので、前に読んだところを確認するのも容易です。
また、図説や写真が、意外にたくさん載っているのも、○。

岩波文庫…しかも、書いているのが物理学者ということで、敷居を高く感じられる方もいるでしょうが、お勧めです。
しっかり読み終わろうという気持ちさえ持っていれば、内容が分からなくて投げ出してしまう、ということはまずありません。

巻末掲載の、訳者の解説にも注目。
というのもこの部分、つい最近(2008年)書かれたもので、『生物と無生物のあいだ』で引用された部分に、誤解に基づいた部分があることを指摘しています。
『生物と無生物のあいだ』を読んだ方は、ぜひこの部分にだけでも目を通してみてください。

訳者;岡小天・鎮目恭夫




ラベル:岩波文庫
posted by kbk-mzp-ck9000CP at 21:20| 東京 ☀| Comment(0) | 書評・ノンフィクション・数理系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『生物と無生物のあいだ』…福岡伸一

『生物と無生物のあいだ』…著者;福岡伸一 講談社現代新書



サントリー学芸賞受賞という触れ込みで、一時期話題になっていたようです。
内容は、生物学史の紹介を交えた、エッセイ風の文章、と言ったところでしょうか。
『生物と無生物とのあいだ』などと銘打っていますが、生命の定義に関する考察は、ほとんどないがしろにされています(その点に関しては、先日、優れた本を見つけました。あとで紹介したいと思います)。

書かれている内容そのものは興味深いです。

DNA、分子生物学に関する基本的な情報。
研究に携わる人たちの苦労と裏事情。詳細な実験方法の紹介。
成功者たちがどんな曲折を経て、歴史的な発見にこぎつけたか。

…ただ、文章がかなり読みにくいです。
下手、というわけではないけれど、説明の途中でころころ視点が変わって、ついていくのが大変。
最初から知識を持っている人が読む分には問題ありませんが、この本から新しい情報を仕入れようとする人には向いてないです。
この本の著者は、物事を簡潔に語るということをしません。
実験結果一つ語るにも、『そもそも生命とは…』風の大上段に構えた言い方をして、無駄な装飾を羅列しています。
加えて、細胞の特性を説明するのに、強引に詩的表現を当てはめたり、その途中で、いきなり研究室のある町の風景描写を差し挟んだり…話題が次々とそれていくので、まともに文章を追っていくと、途中からわけが分からなくなります。

書類などから、必要な情報だけを引き出す訓練をしている人じゃないと、読みこなすのは難しいです。
ちょっとでも話がわき道にそれているな、と思ったら、思いきって読み飛ばし、節の終わりの一、二行にだけ目を通せばいいでしょう。それで充分、用は足ります。

すこし辛口のレビューになりましたが、全体として悪い本ではありません。
上記の点に注意しながら、工夫して読み進めていけば、それなりに楽しめます。

最後に。
普通、この手の本には後ろに索引がついているものですが、本書にはありません。
また、各章のタイトルが抽象的で、目次があまり役に立ちません。
そのため、読み終わった後で特定の事柄を調べようとすると、該当箇所を探すのにかなり骨を折ります。
重要なキーワードなどが出てきたところなどには、付箋をつけておくといいかもしれません。
posted by kbk-mzp-ck9000CP at 20:09| 東京 ☀| Comment(0) | 書評・ノンフィクション・数理系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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