2010年01月23日

『ビョークが行く』…エヴェリン・マクドネル

『ビョークが行く』…著者;エヴェリン・マクドネル 新潮社



ビョークをご存知でしょうか?
世界的なアーティストですが、あまり一般受けする音楽ではないので、名前も聞いたことがない、という方もいらっしゃるかもしれません。
一言で言って、変な歌です。
人の声というよりは、金属の筒を空気が通り抜けるような音が、くぐもって言葉になっている……そんなふうに表現したほうがいいかもしれません。
それが、バックで聴こえる鼓動のようなリズムに合わせて、時に激しく、時にゆるやかに波打っていく、とても不思議な音楽です。

人によって好き嫌いの分かれる歌い手ですが、僕は好きです。
正確に言えば、好きになったり飽きたりしてます。
歌にこもっているエネルギーが強すぎるので、ある程度聞くと飽食気味になってしまうのです。
ネットに繋がっていれば、何かしら試し聴きする手段はあると思いますので、興味を持った方は探してみてください。

さて、肝心の書籍の紹介を。
この本とにかく文章が面白いんです。
小説に『翻訳体』というテクニックがありますね。
もともと日本語で書いているのに、わざと外国語の文章を翻訳したような文体にすることです。
村上春樹さんの小説に時折見られる、あの小洒落た言い回しもその派生系と考えていいかもしれません。
先の『無罪と無実の間』の記事でも書きましたが、英語の論理展開から生み出されるユーモアは、曖昧な日本語の表現になれた私達の目から見ると、かなり新鮮です。
この本では、そんな特異さを極限まで押し広げたエキセントリックな表現が随所に見られます(もっとも、ビョークの歌自体は、それに輪をかけてエキセントリックなんだけど)。

各章のタイトルからして、捻ってます。

・語り手と我らがヒロイン、山の女王となる
・我らがヒロイン、「とんでもない変化」について語る
・我らがヒロイン、ヨーロッパをアイスランド流に侵略し、自分が小妖精であることを発見する


……………などなど。
日本語圏の書き手には、なかなか思いつかない表題です。
もちろん『我らがヒロイン』とは、ビョークのこと。
彼女に惚れ込んだ『語り手』=著者が、その魅力を思いのままに書き殴っています。
ビョークを知らない人への紹介として、いい本ではありますが、伝記とはまた違います。
強いてジャンル分けすれば、エッセイに類する文章です。
序文で著者本人が指摘していますが、内容は多分に主観的。
そのため、文そのものの楽しさに引っ張られながらも、読み終わってみると、結局何が書いてあったのか思い出せなかったりします。
そのため、最初から最後まで順番に読むよりも、暇なときに手にとって、開いたページから適当に読み進めていくほうがいいかもしれません。
全体で一つのストーリーになっているわけではないので、そうしたところで全然支障はありません。
ただ、その分何度でも読み返せる、お得な本と言えるかもしれません。

ところでこの本、原題は『ARMY OF SHE』というようです。
これはビョークの代表曲、『ARMY OF ME』のもじりですね。
この曲は、アルバム『POST』に収録されています。
ついでなので、それもこちらに紹介しておきます。



訳者;栩木玲子
posted by kbk-mzp-ck9000CP at 22:39| 東京 ☀| Comment(0) | 書評・ノンフィクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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